ブライダルには欠かせないお仕事の一つ、ブライダルアテンダーをご存知でしょうか。
実際のところ、ブライダルの世界には、さまざまな名称のお仕事があります。中でもこのブライダルアテンダーは、ブライダルのシーンで「アテンド=付き添う、世話をする」というお仕事です。
誰を、どのようにアテンドするお仕事なのでしょうか。
まずは、言葉の意味から見ていきましょう。
ブライダルという言葉、現在の日本では広く、結婚式やその後の披露宴まで含め、何となく「結婚に関する式典」を表しているように思いませんか?でも、よく似た言葉として「ウエディング」もありますよね。
この2つの言葉、いずれも辞書で引くと「婚礼、結婚式」を表します。でも、使い方に違いがあるのです。
例えば、ブライダルエステ とは言いますが、ウエディングエステ とは言いませんよね。あるいは、ウエディングケーキ とは言いますが、ブライダルケーキ とは言いません。
この2つ、そもそも語源となる言葉が違います。
ブライダルの語源は、「bride=花嫁」ですが、ウエディングの語源は「wedd」。これは本来「保証、保証金」という言葉なのだそうです。古代の「結婚」には、保証金を用意するという習慣があり、そこから「wedd+ing」で、結婚するための儀式をウエディングと呼ぶようになりました。
一方のブライダルは、「bride」に「ale=エール=ビール」が付いた言葉です。ずっと昔のイギリスでは、ビールを作るのは女性の仕事だったため、「花嫁が(自分が作った)ビールを振る舞う集まり=結婚するための式典=結婚式」となったようです。
では、ブライダルという言葉をもう少しもじった「ブライズメイド」という言葉をご存知でしょうか。ブライズメイドとは、来る結婚式に向け、さまざまな準備や挙式当日のサポーとを行う「介添人」のことをいい、実際には花嫁の友人たちが行っていたそうです。
中世の時代から始まった習慣のようですが、本来の役割は「悪魔払い」。悪魔が幸せそうな花嫁にとりつかないように、結婚後の生活が幸せに送れるようにと、花嫁の友人たちは花嫁と同じようにドレスアップして花嫁の傍にいることで、悪魔を混乱させるという役割があったといわれています。
日本でも最近になって、このブライズメイドの習慣を取り入れるカップルが増えているそうですが、なぜか海外ではよくあるスタイルのようです。海外では、手作りの結婚式を望むカップルが多く、また「ブライズメイドの数が多いほど、(花嫁の家の)ステイタスが高い」と考えられているため、花嫁は多くの友人を誘って、自らの結婚式の準備をするのです。
尚、ブライズメイドは花嫁の友人たちですが、結婚式の準備を手伝う花婿の友人たちもいます。彼らのことは「アッシャー」と呼び、バージンロードを用意したり、ブライズメイド達やゲストのエスコートをすることもあります。中でも花婿と一番仲が良く、アッシャーたちのリーダー的存在の人物を「ベストマン」と呼ぶそうです。何だか、格好いい呼び方ですよね。
ところで、日本では昔から「介添人」という役割が、結婚式にはつきものでした。結婚式に参加されたことがある方は、花嫁が歩きやすいようにウエディングドレスの裾を軽く持ち上げたり、高砂へ上がるときに手を添えている人物を見たことがあるかもしれません。その人こそ「介添人」であり、ブライダルアテンダーなのです。
では、花嫁へのお手伝いの内容を見ていきましょう。
一つ目は、物理的なお手伝いです。前述のように、慣れないウエディングドレスを着た花嫁が歩きやすいよう、ドレスの裾を軽く持ち上げたり、高砂にあがる時に手を添えて転ばないようにエスコートしたり、座るときにヴェールの裾を踏まないように位置を整えたりします。
また、ゲストからは見えないところで歩いて着崩れてしまったドレスや着物を整える、座るときにそっと椅子を引く、メイク(口紅)が落ちないようにグラスにストローをさす、涙が出そうなときにハンカチを渡す、ということもあります。
尚、花嫁のドレスの裾を軽く持ち上げるのは、躓いてしまわないようにするという意味と、歩きやすいように重さを軽くするという意味があります。ウエディングドレスやブーケの中には、裾がとても長く、どうしても引きずって歩いてしまうようなデザインもあります。その場合は、床に引っかかってしまわないよう、なおかつ見栄えを損なわないよう、注意を払いながらお手伝いすることになります。
花嫁が和装の場合も同様に、歩く時に転ばないようにそっと手を差し出したりします。特に「文金高島田」と呼ばれる髪型は、かつらを使う花嫁も多いため、頭が重くなり、歩くときのバランスが悪くなります。白無垢も色打掛も、後ろ側の裾は長いですし、足元を見るのが難しくなります。慣れない衣装で一人歩くのは、とても大変ですから、ここでもブライダルアテンダーがこまごまとお手伝いをすることになります。
二つ目は、精神的なサポートです。結婚式って、どうしても花嫁は緊張します。でも、せっかくの主役なのですから、顔がこわばっていたり、緊張で立っていられないようでは台無しです。そこでブライダルアテンダーは、花嫁の緊張をほぐすよう、リラックスできるような雰囲気づくりをします。「肩の力を抜いて。にっこり笑ってみましょう」などと、声をかけることもあります。また、緊張のため挙式や披露宴の段どりを忘れていれば、そっと声をかけます。
花嫁にとって、とても心強い存在ですよね。
花婿へのお手伝いも、おおよそは花嫁へのお手伝いと似ています。お二人の傍に寄り添いながら
などのこまごまとしたお世話をするのも、ブライダルアテンダーに求められることです。
また、花婿の場合は特に、友人たちからのお酌が続くこともあるでしょう。グラスの飲み物が一杯になり、飲み切れないような時はそっと捨てるというのも、お世話の一つなのです。
こうして、滞りなく結婚式や披露宴が進むよう、さりげなくお世話をするのが、ブライダルアテンダーのお仕事です。
花嫁と花婿にとっての結婚式や披露宴は、一生に一度の晴れ舞台のはず。これを滞りなく進めること、花嫁と花婿にとって「幸せな思い出」にできるようにお手伝いするのが、ブライダルアテンダー。そこにはやはり、究極の「おもてなしの心」を持つことが大切です。
結婚式や披露宴に関わるのは「人」ですから、どのようなハプニングが起こるか分かりません。花嫁がドレスを踏んで躓いてしまうとか、花婿が緊張しすぎて歩けなくなるといったことも、大きなハプニングにつながります。
そもそも、結婚式や披露宴の場で、緊張もせずにいつもと変わらずに行動できる人は少ないでしょう。また、結婚式も披露宴も、お二人の大事な人たちをゲストとして迎えていますし、普段とは違う『フォーマル』な場です。
このような場で、さまざまなハプニングに動じることなく、即座に対応できるスキルが必要です。フォーマルな場に不慣れな二人に、正しいマナーをさりげなく伝えることもも「(結婚式や披露宴を)成功させたい」という、花嫁と花婿の希望を叶えるということにつながります。
「おもてなしの心」とは、相手(この場合は、花嫁と花婿)のことを第一に考え、相手が必要とすること以上の気遣いができる心です。
そこには、さりげなさが必要ですし、心理的な負担を陰ながら支えたりするコミュニケーション能力も必要です。また、想定外のハプニングに即座に対応できる判断力や、臨機応変さも求められます。
「おもてなし」は、日常生活の中でも多々見られることではあります。しかし、結婚式や披露宴ともなれば、お二人にとって究極な状況ですから、誰にでもできる「おもてなし」ではなく、ブライダルアテンダーならではの「究極のおもてなし」が必要とされるのです。
ブライダルアテンダーになるために、必須の資格はありません。ただし、持っているとより良い資格はあります。
ブライダルに関するお仕事をする人が心得ておくべき、基礎的な実務知識を問う検定試験です。ブライダル業界で働きたいなら、ぜひ取っておきたい資格です。ブライダルのプロとして、持っておくべき実務的な知識などを、どれくらい身に付けているかを推し図るため、アシスタントのレベルから、ブライダル・コーディネーター(中級)、ブライダルマネージャー(上級)へと、ランクアップしていきます。
マナー・プロトコール検定は、国際的なルールやマナーに関わる、知識や技能のレベルを推し図るための民間資格です。ブライダル業界やホテル業界など、いわゆる「ホスピタリティ産業」に携わる仕事では、必須となる知識や技能、マナーやプロトコールを学ぶことで、取得できます。1級、準1級、2級、準2級、3級と5つのランクがありますが、上級は例えば、国際的な業種(国際線の客室乗務員など)が取得しているような資格です。ブライダル、ホテルなどに携わる人は、ぜひとも取得しておきたい資格といえます。
いわゆる「サービス業」に従事する人は、ぜひとも取得しておきたい資格です。
接客応対、接遇サービスに関する知識や技術が、どのくらい身についているかを推し図るための検定試験です。接客などのサービス業務をする上で必要となる心構えや、話し方、立ち居振る舞いが審査されます。これらは、その場にいる人たちの人間関係を理解した上で、誰にどのように接するのが良いのかを、瞬時に判断する必要があります。レベルとしては、1級~3級までがあります。
これは文字通り、レストランにおけるサービスの技能があるかどうかを推し量る検定試験です。「サービス」に関する検定試験は、前述のサービス接遇実務検定などいくつかの種類がありますが、レストランサービス技能検定はその中でも、唯一の国家検定なのです。
レストランサービスとは、「料飲サービス(料理や飲み物を提供するサービス)」を提供するお店などで必要とされるサービスの一つです。職種としては、レストランのホールスタッフ、ソムリエ、バーテンダーなど、料飲サービスを提供する空間で、お客様と接する人たちすべてが含まれます。
これらの職種に就く人たちの、接客の仕方、立ち居振る舞い、ホテルのレストランでは必須となるテーブルマナーなどの作法が、どの程度身についているかを推し図る検定試験です。
冒頭でお伝えしたように、海外では「ブライズメイド」という、花嫁の友人たちによるブライダルアテンドが一般的かもしれません。しかし日本では、ブライダルアテンダーはプロが行うことが一般的です。
前出のような資格は、すべて「サービス」を提供するというお仕事で、必要とされる知識と技術を兼ね備えていないと取得できません。言い換えれば、これらの資格を取得しているということは、すなわち「(何らかの)サービスを提供するプロ」ということです。
「サービス」とは、その質によってお客様の満足度を左右する、とても大事なものです。目に見えない、形の無いものだからこそ、何をどう提供するのかが、分かりにくいものでもあります。
現在の日本では、ブライダルアテンダーが活躍する場所として、ホテルやブライダル専門施設があります。日常生活では、なかなか利用することのない施設かもしれませんが、だからこそ結婚式や披露宴という、とても大事なシーンでは、こうした施設を利用します。自分たちを祝福して下さるゲストの方々を、精一杯もてなしたいという気持ちの現れかもしれません。
つまり、そこで花嫁と花婿のお世話をするブライダルアテンダーは、主役のお二人以上に、ゲストをおもてなしする心が必要とされるのです。
京都ホテル観光ブライダル専門学校では、将来ブライダルアテンダーを目指す方に、サービスとは何か、おもてなしの心とは何かを学んで頂くことで、ブライダルアテンダーとしてのサービスを提供するプロを育成しています。
参考
京都ホテル観光ブライダル専門学校
ブライダルアテンダー
https://www.kyoto-carriere.ac.jp/dpt_bridal/job/attender.php
ウェディング・ブライダルの語源って?
https://onemovie.jp/blog/%E7%B5%90%E5%A9%9A%E5%BC%8F%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%82%81%E7%9F%A5%E8%AD%98/etymology/etymology-wedding-bridal/
花嫁の介添人・ブライズメイドはなぜ海外で流行しているの?
https://www.cocomelody.jp/mag/bridesmaiddresses/
ブライダルアテンダー
https://www.vantan.com/occupation/detail/22.php
結婚準備のリアル
結婚式で欠かせない介添え人の仕事とは?
https://real-kekkon.com/kaizoenin/
ブライダル業界のミライ
介添人(アテンダー)になるには
http://bridalfuture.com/hataraku/attender/
キャリアコンパス
結婚式の成功にはこの人の存在がある? 知られざる「ブライダルアテンダー」の仕事とは
https://doda.jp/careercompass/compassnews/20160519-22795.html
ウェディングプランナーガイド
介添人(向いている人など・・)
https://www.jhs.ac.jp/weddingplanner/works/supporter.php